最近の国内IT業界のビジネスの勝者は、メーカーではなくSP (Service Provider:
サービスプロバイダー)です。携帯電話事業者(キャリア)は、典型的なSPであり、顧客ニーズにマッチしたサービスを提供可能にする携帯電話システムを運用し、「規模のビジネスモデル」を前提にモバイルユーザ向け事業を展開しています。
従来、国内キャリアはシステムや製品や技術の開発は国内メーカーに開発委託していました。しかしながら、近年のグローバルサプライチェーンの発達に加えてiPhoneを代表とするスマートフォンが普及するにつれて、国内キャリアはサービス提供に必要な基地局や端末等の通信機器を高コストパフォーマンスで国際調達可能となりました。国内メーカーの物作りのビジネスへの参入機会が大幅に減少しています。結果的に、国内メーカーも自社開発を断念し、研究開発部門の縮小や新商品創出力の大幅低下等のマイナスのスパイラルに陥っています。
イノベーションによる競争優位な新商品創出の必要性は理解していても、経営資源(人、物、金、情報)等の制約に縛られ実際に積極的に取組む企業は少ないのが現実です。そして、気付いた時には大幅減収減益で固定費や経費削減のためのリストラや事業縮小に追われるマイナスのスパイラルに陥る企業が増えています。
特に、技術の研究開発への先行投資は、企業の経営状況に直結し、真っ先に削減対象となりがちです。増収増益を続ける売上高1兆円超のエクセレント企業を除き、自社単独で研究開発に取組む企業は数少ないのが現状です。